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           メール・マガジン

      「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第063号       ’00−10−13★

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     アレンジしなくちゃ

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●第60号で

MBAに感じた些かの疑念を述べましたが、マーク H. マコーマックの

(邦題)「マンビジネス」にはもっとハッキリ書いてあります。

 

これは原題通り、<ハーバード・ビジネス・スクールで教えないこと>を

彼の体験談で補ってくれるという、タメになって面白い本。

 

 

彼の会社では長らくMBAを雇っていた。  若い頃は無条件に、問題が

あったらMBAを雇えば良い、と考えていた。  高い教育を身に着けた

MBAこそ最良のスタッフだと思っていた、、 とその序文にある。

 

そこまで信じてくれた人を裏切るのは宜しくない。  が、MBAたちも

意識的に裏切っているわけではない、、  マコーマックも気付きました。

 

 「初期に雇ったMBAたちのほとんどが、上にバカのつく正直者か、

  あるいはビジネス・トレーニングの犠牲者かのどちらかだった。

 

  人の心や仕事の本質が正確に把握できなかったり、間違った見方を

  したりして、実生活に関して学ぶことが不可能になってしまっていた

  のだった。」

 

セントルイスのE社で出会ったMBAたちに私が感じたのはまず疑問で、

こう明確に捉えていたわけではありませんでした。  が、そこはサーモ

スタット屋の高感度、たちまちピンと来た、、 マコーマックはそれを、

 

 「経営管理の修士号が、経験から何かを学びとる能力の邪魔になって

  いるのに気づいた」と要約しています。

 

日本の大学で授かるのが<教養>だとは思いませんが、その程度であって

も「教養が邪魔して、、」とか、お笑いのタネにされますよね。 レベル

は違うだろうけれども、それは洋の東西を問わないようであります。

 

*   *

 

しかしMBAの肩書きでなくとも、<邪魔するもの>は色々あるでしょう。

それが時に目や耳を塞ぐ。  とは言っても目は見えているし、耳だって

聞こえているので、本人は<邪魔>されているとは思わない。  だから、

見るべきもの聞くべきことを誤りなく捉えていない自分、には気づかない。

 

それが問題の解決や事態の打開を妨げます。 少なくとも遅らせることは

間違いありません。

 

マコーマックの本で引き合いに出されているのは、ペプシコーラの重役が

バーガーキングを口説くのに手間取ってしまった話。

 

彼には(教養あるが故、でしょうな)バーガーキングがコカコーラを締め

出すとは考えられなくて、(多分謙虚さで)<客がどちらかを選べる>案

でプレゼンテーションを進めたのです。  が、何故かその案では、

 

バーガーキングに喜ばれなかった。  で散々考え、やがて気づいたのが、

ペプシもバーガーキングも、それぞれの業界で第2位を占めているという

事実。 ともにナンバーワンを追撃する立場にある、という共通点でした。

 

しかも<品質本位>の経営方針でも一致。  なら、コカコーラではなく、

我がペプシをメニュウに入れて頂くのが理に適う、、 胸を張って、そう

売り込むべきだったのですね。  実際、それが正解でした。

 

そうしてみたところ、バーガーキングの担当者に「漸く分かってもらえて

嬉しい」と言われた、というのですから。

 

*   *   *

 

この本の原著は1984年、日本語版は85年ですから、私が合弁の相手

としてオハイオのT社を選んだの(は60年代末)がこれをヒントにして

でないことは言うまでもありません。  しかし、全く同様の発想で行動

していたことが分かって面白い。

 

当時、家電機器制御用機能部品メーカーのナンバーワンは、かのテキサス・

インスツルメンツ。  我が国ではICで知られるようになる前のTIで

したが、あちらではすでに<暴れん坊>、<泣く子も黙る>の定評でした。

 

そのTIを相手に戦う、というイサマシイところがT社と我々の共通点1。

歴史ある専業メーカーT社はともかく、サーモスタット屋としては最後発

だった我が社が敢えてその道を選んだのは、それによって国内競合他社に

差を付けようという魂胆からでした。  私に<邪魔するほどの教養>が

無かったことの証明、でもありますが。  そして、

 

品質第一主義を掲げて実績を築いたという点も共通でした。  たちまち

意気投合したのは不思議でない。  気位の高いT社がお前を相手にする

かね?と疑う<教養の高い>人もいましたが、、  論より証拠。

 

戦略立案上の大きな WANT の一致、、  それは「手を携えるべき相手の

選定」というステートメントで知恵を絞る場合には、決して見落としては

ならないポイントです、、  とマコーマックが書いているわけではない

が、 Rational Process だとそうなります。

 

絵解きとしては、この方が分かりやすいのではありませんか?

 

*   *   *   *

 

このように、本や記事で紹介されているケースは、 Rational Process に

当てはめると意義や要点が分かりやすく、また、すぐご自分の仕事に反映

させることが出来ます。  それに実際、

 

Rational Process はコンテンツを提供するものではないので、オサライ

するにも実技に応用するにも、何か<下敷き>を用いて臨場感を補った方

が良いのです。

 

***************

 

 

 

●同じ本の「無駄骨を折るな」

という見出しのケースに、ちょっとした尾鰭を付けてみました。

 

 

それは社長臨席の大きな会議。  各部署、最近の状況を聞かせて欲しい

というご要望です。  認められるチャンス!  みんな張り切りました。

 

まず、広告担当重役。 「今度のキャンペーンは、多数の斬新なアイデア

を盛り込みました」と、その内容を詳細に説明し、胸を張る。

 

マーケティング担当重役は、みずから発案した各種販促ツールの期待効果

を強調し、「このプランこそ、業界に革命をもたらすものです」と断言。

 

販売部長も自信満々。 「我が社の販売体制は業界一。 ご安心下さい」。

いや、いつもながら全く頼もしい。

 

生産部長は最近導入の新しい加工設備の順調な稼働状況を説明し、「今や

どの競合メーカーと比べても、生産効率は我が社がダントツです。」

 

品質管理部長も新設備導入に貢献した一人で、「これほどの品質は、、」

と優越性を語り、喜びを隠さない。  しかも、その新設備は、

 

環境管理部長によると、「ISO基準の達成は言うまでも無く、周辺住民

や自治体の厳しい監視にも十分対応できる」ものなのです。

 

これら意気盛んな報告を一通り聞き終わったところで、社長がおもむろに

「ありがとう。 諸君の熱心な取り組みには敬意を表します。 どの活動

もアイデアに富んでおり、慎重に計画され、断固として実行されたと思う。

 

しかし一つだけ、どうしても分からないことがある。  それについて、

誰か答えて欲しい。  つまり、そのように

 

諸君が、それぞれの担当分野で業界最高レベルを達成しているというのに、

なぜ我が社の売上げは業界最下位なのか?  それも、この3期連続で。

実に不思議だ。  いったいこれは何故なのか?」

 

熱気は一瞬にして去り、会議室は重い静けさに覆われました。  誰一人

答えようとはしない、いや、口が開けない。  こりゃまずい! 

 

何を思い付いても、それでこの場面が救えるとは思えません。  永遠に

続きそうな静寂、、  どうしたらそれを打ち破ることが出来るだろう?

 

という時、片隅から密やかな、指名されざる、しかし勇気ある発言が一つ。

「我が社のドッグフードは、、、 イヌに嫌われているんです」

 

*   *

 

落語で言うサゲの種類では、これ、<ぶっつけ落ち>でしょうかね。

アッという意外性。  しかし「ん、それで辻褄が合うぜ、、」。

 

イヌ用食料なのに、肝心の顧客、おイヌ様のお気に召さなくちゃ、売れが

伸びるはずはありません。  それまでの論議が、まるでバカみたい、、、

 

マコーマックは「時々アイディアや製品、その企画意図などが本当に悪い

ことがある。 こんな時は値下げや広告でどんなに努力しても無駄である。

損失が大きくならないうちに、販売を打ち切ることである。」と断じ、

 

「しかし、この反対の行動に出る人たちが多いのはどういうわけだろう、、、

こういう努力を無駄骨を折る、というのであるが。」と結んでいますが、

 

それはほかの売り物があっての話。  この会社にそれがあるのかどうか、

書かれていないが、打ち切るだけで良いのかな?  疑問が残ります。

 

*   *   *

 

要するに、<顧客ニーズの把握>という基本を忘れていたところが問題。

相手がおイヌ様ですから<把握>も容易ではあるまいが、CSの視点を

抜きにして担当業務の効率化に励むなんて、そもそもナンセンスでした。

 

まずそこを押さえて品質基準を定め、それを実現する製造手段の選定、

そのような商品にふさわしいキャンペーン案の選定、また、販売体制の

確立、、 とブレーク・ダウンした上で着手すべきだったのに、ね。

 

顧客へのサービスという大きな狙い度外視して、それぞれの部分最適化

に努めてしまった、即ち Self-centered。  最下位定着は当然でした。

 

ドラッカー流に言えば、みな < to do the thing right > には努めたが、

< to do the right thing > ではなかった。  コントロールに専念し、

マネジメントを忘れた。  だから効果が生じなかった、だけのこと。

 

*   *   *   *

 

ここで責められるべきはトップです。  <質問>を怠っていたカドで。

もっと早くからそれぞれの担当に、「キミのところは、どんなステート

メントで進めているのかな?」とでも訊くべきでした。

 

さらに、「<顧客ニーズの満足>という WANT が重み10なんだろうね?」

と切り込み、ほかの WANT は何か? その重みは? とチェックすべき

でした。  その程度のやり取り、たいして時間などかかりはしません。

 

***************

 

 

 

●このエピソードを

DAの解説に応用すると、たいへん良く分かって頂けるだけでなく、笑い

声も上がって、実技演習への導入がスムーズです。  でも、

 

いざ、受講者自身の現実的なテーマで論じ始めると、、 笑うどころでは

なくなる。  どの職場でも、かなり<無駄骨>を折っていたこと、いや、

折らされて?いたこと、がヒシヒシ分かってくるからでしょうね。

 

 

みんな一生懸命やっているのに成果が挙がらない、という場合には、まず

「我々は、どんなステートメントにもとづいて行動していると言えるか?」、

次に MUST 、 WANT は正しく描き出されているか、 WANT の重み付けは

適切か、とチェックをかけること。  きっと何か見えてくるはずです。

 

あるいは、誰かさんの行動ぶりに合点が行かない時、あいつアホか?!と

いきり立つのは感情の人。  Rational 人間なら、「いったいこの人の

ステートメントは何なんだろうね?」、「この行動は、どんな WANT を

満たすためのものなんだろうか?」と考えるでしょう。  そうすると、

 

ある人の行動が、実は全くかけ離れたステートメントに基づいていたこと

が見えて来るかも知れません。  相手によっては、それを指摘してやら

なくてはならない。  が、相手が<上>だったら、、 ?

 

ムリに強がって、ネコの首に鈴を付ける役を買って出るべきか、どうか?

「誰に鈴を付けさせるか」をDAしますか?  それより、「そのままで

行くとしたら」のPPAかな?   思案のしどころ、、 でしょうな。

 

*   *

 

どんな技法も自分の体質や骨格に合わせてアレンジして用いるのでないと

役立ちが生じにくい、と毎度申し上げておりますが、それは<プロセス>

の話。  しかし、<コンテンツ>についても同様なのです。

 

よそ様のケースも、そのままではやはり<よその話>。  アレンジして

初めて身に迫るものになり、色々気づかせてもらえる。

 

およそ<唯一の正解>というものはあり得ませんが、いじくるうちに何か

それに近いものが掴める。  そのようにすることが<楽しみ>に思える

ようだったら、、  あなたも<問題解決型の人>、ですね。

 

                           ■竹島元一■

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